海原
沖に目を向けたら
広い地平線が広がっているものだろう
その日は
違った
雲のようにそいつは降りてきた
平原たる海をすべて埋め尽くすように
低く降り立ち
波間のすれすれに浮かんでいる
そいつは何者か
知っているものは少ないのかもしれない
なぜ私に見せるのか
うっかり目を離すと
そいつは
手のひらを返したように
手のひらになっている
巨大な手のひらは
何を掬い取るのか
お前は知っているだろう
そうだ
だから見せるのか
再び手のひらは
形を変える
回帰を待つのか
そこで
いや回帰を促すのだな
そこで
私は見て
ただ証人になるだけ
誰に話すわけでもない
だから私に見せるのか
ならば沖の水平線が無限になるまで
ここに座って見ていよう