2012-11-06

夕暮れ電車



ある日気づくと
電車に乗って揺られていた

隣は知人だった
そしてその隣も

ああ、仕事で電車に乗ったのだ
眠りそうになったぞ


隣の男は暇そうで広告を見ている

その隣は女だった

その女、よく見た顔の一つだ
腹具合などが悪くなると
ふっと夢に出てきては助けを求めよる
そして
現実は知らぬ顔をする

女は私を無視して男を独り占めにしている
話を途切れさせない
話しまくる話しまくる
意味のない言葉ばかりのようだ
そのうち声だけが続く
なにを叫んでいるのか?

男は広告を見ている
そこには次の仕事が書いてある

と言っても職種が違う!?

この男もしや転職を考えておるのか?

ゆゆしき事態
君ほどの人材がいまどきすぐ見つかるかどうか・・・
男は女を無視して
〇〇さん、この仕事どう思う?

私めに訊ねるか?!
同僚であるぞ
よしというと思うてか!

良しというてまう私を知ってか知らずか・・・
あわわ

突然
その男は消えた
「忽然」というのはこのことをいうのだなぁ


電車は揺れる
何事もなかったかのように
窓を背に座ると体が横に揺れて
眠りをさらに誘う

ふと窓の外を見る

すっかり夕暮れ

すると線路近くの電柱にジャケットを着た男が飛び移った
さっきの男とは明らかに違うぞ
むむっ
あれは上司ではないか?!
チェックのジャケットは見たことがあるぞ!

そのまま、ややっと上に飛びあがる
蝙蝠のように
脱走兵のように・・・
亡命していくのか?

この電車は乗っているとまずいところに行くらしい・・?
そんな気にさせる
男は追い詰められた挙句
飛び降り
命からがら
途中下車を試みた

その決心はどこからきたのか

この電車
いったいどこ行きだったろう?