2012-04-04

詩人ランボー



アルチュール・ランボーは(1854~1891)はヨーロッパやアフリカを放浪した詩人。近代の幕開けのなかで実は何を見ていたのか。
それは、古いとか新しいとかではなく、ただ見えないものを見ていた。
詩人はみなそうだろうけれど・・・・。


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  母音

Aは黒、Eは白、Iは赤、Uは緑、Oは赤、
母音たち、
お前たちの隠密な誕生をいつの日か私は語ろう。

A、眩いような蠅たちの毛むくじゃらの黒い胸衣は
むごたらしい悪臭の周囲を飛びまわる、暗い入り江。

E、蒸気や天幕のはためき、誇りかに
槍の形をした氷塊、真白の諸王、繖形花顫動、

I、緋色の布、飛散った血、
怒りやまた熱烈な悔悛におけるみごとな笑い

U、循環期、鮮緑の海の聖なる身慄い、
動物散在する牧羊地の静けさ、
錬金術が学者の額に刻み付けた皺の静けさ

O、至上な喇叭の異様にも突裂く叫び、
人の世と天使の世界を貫く沈黙
―その目紫の光を放つ、物の終末!

          (中原中也 訳)

白鳳社 朝の晃編「フランス詩集」より   

*Oを赤としていますが青~赤紫を指すかもしれません。他に青とする訳を見ました。
 また、もしかしたら円をとらえて赤としているかもしれません。