2012-04-19

ランボー~わが放浪~

ランボーが、放浪の生活をうたった詩。
日本人の女性から見ると若い男性が女神や星との語らいを詩にすることを日本人の男性では想像できないでしょう。逆に日本人の男性から見て、ポケットに手をを突っ込む女性や、擦り剥げた靴を履いている女性というのもまた、しかり、かと・・・。
つまり、この詩に非常に魅力を感じる方は、ランボーが、両性をバランスよく持ち合わせ、かつ、詩の中で表現していることに斬新さや新鮮さを感じて惹きつけられているともいえます。
そして、もう一つ、注意してほしいのは、ランボーが「額」に潜む能力(第3の目)を使っていることです。だからこそ、この詩はリアルに迫ってくるのです。彼にとって紛れもないリアリティなのです。

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       わが放浪


私は出かけた、手をポケットに突っこんで。
半外套は申し分なし。
私は歩いた、夜空の下を、ミーズよ、私は忠実でした。
さても私の夢見た愛の、なんと壮観だったこと!


独特のわがズボンには穴が開いていた。
小さな夢想家・わたくしは、道中韻をば捻ってた。
わが宿は、大熊星座。大熊星座の星々は、
やさしくささやきささやいていた。
そのささやきを道端に、腰をおろして聴いていた。
ああかの九月の宵々よ、酒かとばかり
額には、露の滴(しずく)を感じてた。


幻想的な物陰の、中で韻をば踏んでいた、
擦り剥げた、私の靴のゴム紐を、足を胸まで突き上げて、
竪琴みたいに弾きながら。




 (中原中也 訳)

白鳳社 朝の晃編「フランス詩集」より