2012-04-29

ある景色




目の前に立つ
その人は人だろうか
薄緑の若草
金色の髪のような細い糸
織りこまれたものの意味を知るのはいつの日だろう
もはや知っているようで知らない
知らないようで知っている

ふんわり纏うベールのような衣の裾
その人は人だろうか
湖に映る景色のように
静かな笑みと健やかな肌
細く力強くその木立はある
薄紅がときどき差せば
きっと真実が明かされるのだろう
もはやそこにあるようでそこにない
そこにないようでそこにある

そよ風ふけば
香り立つ
その人は人だろうか
涼やかな花の茎がのびるように
銀色の水のが小さなせせらぎとなって結び合う
優しさとはそのようにいくつもあったかと
驚きをもって凝視したような
もはや気づいているようで気づかない
気づかなかったようで気づいていた