風が吹き抜けると
時はとまったり、振返ったり
画が写真のように
めくれて
いつも同じブックマークで
止まる
美しい泉のように
側に流れる記憶
そのまま息が止まっても
なんの悔いがあるだろうか
***
Ⅱ 捜索
鈍色は
紅をにじませた
あとに現れる過去の恐れ
夜中の尋ね人はいつも笛を吹く
葉の影に隠れた者を捜す日々
風に揺れて時々姿を現す
一瞬の時を刻み
消える
***
Ⅲ 契機
天空はかがり火
夜中をめぐる物語
夜明けまで続く物語
朝の光より夜の星
人々の蠢き
動物たちの囁き
芽吹くときの木々の叫び
遠い空の上から
地は降り注ぐのか
明日も今日も昨日もなく
縮れた時の間を息づく者になる
***
Ⅳ 解く
混沌の体の中を流れるものは
何か
不思議の水は
せせらぎのようなら
快く
水たまりのようなら
枯れる
誰が知り得るだろう
2010/7/4