2012-03-09

四つの異なる記憶

Ⅰ 消息

風が吹き抜けると
時はとまったり、振返ったり

画が写真のように
めくれて

いつも同じブックマークで
止まる

美しい泉のように
側に流れる記憶

そのまま息が止まっても
なんの悔いがあるだろうか


***


Ⅱ 捜索

鈍色は
紅をにじませた

あとに現れる過去の恐れ
夜中の尋ね人はいつも笛を吹く

葉の影に隠れた者を捜す日々
風に揺れて時々姿を現す

一瞬の時を刻み
消える


***



Ⅲ 契機

天空はかがり火
夜中をめぐる物語
夜明けまで続く物語

朝の光より夜の星
人々の蠢き
動物たちの囁き
芽吹くときの木々の叫び

遠い空の上から
地は降り注ぐのか

明日も今日も昨日もなく
縮れた時の間を息づく者になる



***


Ⅳ 解く

混沌の体の中を流れるものは
何か

不思議の水は
せせらぎのようなら
快く

水たまりのようなら
枯れる

誰が知り得るだろう

         2010/7/4