2012-03-07

3月の鳩


校舎の廊下、階段、窓ガラス
懐かしい街角のように漂っている

誰もいない日曜日
君の後ろ姿が現れる
幻と現実の
重なり合った

大切な瞬間

約束らしくない約束は偶然のさなか
自分の思いと
君の認識が一致していると信じてみる
胸の高鳴りと熱
白い頬に通り過ぎる風はどこまでも透きとおって
髪に促されてすれ違う

暗くなった校舎の角
いくつもの鞄のすり傷
隊をなして怒涛のように走り抜けた白いシャツたち

金の鳩が舞い降りて渡り廊下に降り注ぐものとは

いつか来た君のロッカー
毎日君の手がそれを開き一日の思いを詰め込む
幼さの残るバラ色の頬

どこまでも朝を呼び
そのままとどまっていてほしかった
待っていてほしかった
同じ場所にいたかった

過去形の現実が冷淡に並び
ただ現実の意味付けをしている
君の歩んだ動線を漠然と追う

3月が来た
舞い降りた鳩は青白かった
ただ凛として光の中にたたずむ