2013-01-19

白紙の矢文


大山咋神
ふと思い出して呼んでみる
再び現れる勇ましいその姿


何か用があるみたいなのに言葉がみつからない
と伝えると

それではこちらは何もしてあげようがない
私を呼んで私に頼み事をする者はいる
そのように頼みたいことを伝えてくれなければ
成すべきことが成せない
支えるべき手が現れない

そう・・・天使もよくそう言うよね
頼んでくれないと何もできないと

大山咋神を見上げ
実は私も何も頼んでもらえないから何もできないの
と思わず叫ぶ

すると大山咋神は怖い顔を緩めて
こちらを見た
そのとき共振するエネルギーが起こり
風が吹くように流れてきた
私の周りをそのエネルギーが寄りそう

肩車をしてやる
どうぞ乗りなされ
そこから天下を見渡しなされ
良い眺めになるはずじゃ

言われるままに
片方の肩に乗り広々とした土手にでも腰かけるように座る
涙が自然と川のように流れる

本当に見晴らしがいいね

しばらく座っているといい

私ね
過去に言いたいことがあったのに
何も言わずに来てしまった

そうかね
ではそれが頼みたいことではないかな
そこへ向かって矢文を放とう

見よ
折りたたまれた文を矢に結び
矢を放つ
何という勢い
瞬く間に飛んでいく

その矢じりは置いてきてしまった場所を貫く
ただそこにいた証として
射抜かれた

白紙の矢文