2026-08-25

満月の鏡

 8月の満月


その者には秘密がある


人に聞かせてもなんだそんなこと

と思われるようなことなのだが


本人にとっては人生のすべてにそれが暗く照らしているのだ


試験に落ちた


それだけだった


実によくある話だ


それでもその者にとっては一大事

そんなことただの一度たりともは許されない

何年経っても

10年20年30年そして50年


還暦を過ぎてもまだまだ癒えない

その者の根拠のないプライドの瑕


そして適当な人間に向かって毒を吐き続けている


・・・

意外にもそんな人間は多い


顧みる勇気がない

認める潔さもない

だから失敗に対するリベンジを仕掛けようとしない


甘んじて50年

どんなに金持ちと一緒になろうと

子供が一度も試験に落ちたことがなくても

いやそれだけに彼女はかえってますます

誰にも知られたくない自身の能力のなさ

情けなさ

ひ弱さ

そして人を傷つけずにはいられない卑劣さが虫がわくように増殖し続け


月がそのすべてを映し出しその者の全身に押寄せる



それでもその者は悟る術もなくもがき苦しむ

周りは訝しげにただながめるだけ